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社労士コラム

障害年金と初診日

2019年9月24日 社会保険労務士 原田聡

一部の人を除けば、その多くは、生活のために働くわけだけど、中には働きたいけど、体に障害があって、働けない人だっています。そんな人たちの生活の支えの一つが「障害年金」ではないでしょうか。
障害年金は、障害があれば誰でも支給されるわけではありません。支給されるには、①初診日要件、②保険料納付要件、③障害認定日要件の3つの要件をすべて満たす必要があります。今回は、そのなかの一つ、「初診日要件」についてです。

障害年金には、国民年金の障害基礎年金と厚生年金の障害厚生年金とがありますが、障害基礎年金を受給するには、初診日に国民年金の被保険者であるか、または被保険者であった者であて、日本国内に住所を有し、かつ、60歳以上65歳未満であることが必要です。また、障害厚生年金を受給するには、初診日が厚生年金保険の被保険者期間中にあることが必要です。
この初診日がいつなのかは、初診日にどの年金制度の被保険者であったかでもらえる年金が変わるので、とても大切なのです。

国民年金では、加入者を第1号被保険者(自営業者、自営業者の奥さんで20歳以上60歳未満の人等)、第2号被保険者(会社員)、第3号被保険者(会社員の奥さんで20歳以上60歳未満の人)を3つに分けています。初診日に第1号被保険者か第3号被保険者であれば、その人がもらえる可能性があるのは障害基礎年金になりますが、その人が第2号被保険者であれば障害基礎年金と障害厚生年金になります。

さて、この初診日、それがいつなのかの判断が難しい場合もあります。単純に今まで健康であった人がある日に交通事故、病院で治療するもの、障害が残ってしまった場合であれば、交通事故で病院で最初に治療された日が初診日ということになりますが、肝炎で治療をしていたが、肝硬変になり障害年金の申請をしようとする場合、その時の初診日は、肝硬変としての治療を受けた最初の日又は肝炎で治療をうけた最初の日のどちらになるのかです。初診日にどの年金制度に入っているかで大きく年金額が変わる可能性があるので、初診日の特定はとても大事なのです。ポイントは、肝炎と肝硬変との間に相当因果関係があるかないかです。相当因果関係があれば、初診日は肝炎で治療を受けた最初の日となります。
相当因果関係があるとは・・・なかなかムズカしいものです。

障害年金等でご相談があるかた、愛知総合法律事務所までどうぞ。

パートタイム労働法

2019年9月6日 社会保険労務士 原田聡

企業の人手不足を背景に、アルバイト等短時間労働者の果たす役割は大きくなってきています。短時間労働者の適正な労働条件の確保等のため「パートタイム労働法」が定められていますが、働き方改革により、来年4月より、「パートタイム・有期雇用労働法」と衣替えをし、有期雇用労働者もこの法律の対象となります。

具体的には、これまで、フルで働く有期雇用契約の労働者は、パートタイム労働法の対象とはなっていませんでしたが、4月以降は対象となるということです。
改正されるポイントは、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者について、正社員との間での給料などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されるほか、正社員との待遇差の内容や理由等パート労働者等から説明を求められた事業主は、説明することが義務となります。

短時間労働者を雇用するときに雇用契約書等で労働条件を明示しますが、賃金や退職に関する事項等労働基準法で規定された内容を明示するだけでなく、さらに、パート労働法では、パート労働者については、①昇給の有無、②退職手当の有無、③賞与の有無、④相談窓口の4つについても明示しなければなりません。

 労働環境の激変期にいる今、労務管理等についてご相談がありましたら、一度ご相談ください。

労働者と労災保険、社長と特別加入

2019年8月30日 社会保険労務士 原田聡

労災保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して、必要な保険給付が行われ、保険給付には、業務災害、通勤災害に関する保険給付と二次健康診断等給付があります。

 労災保険に対象となるのは、まず「労働者」であることです。会社勤めのサラリーマンは当然に労災保険の対象となりますが、同じように活動していても「労働者」と認められず、労災保険の保険給付が受けれない場合も考えられます。
 例えば、「お坊さん」。お寺との関係がどうであるかによって、労働者かどうか判断が分かれます。「会社の社長」は、労災保険の対象が「労働者」であることから労災保険の適用はありません。工務店からの仕事をこなす大工も判断が難しいところです。工務店の指揮監督下で労務を提供しその対価として報酬をもらっていたのかや大工に事業者性があるのかなどいろいろな角度から検討することになります。

 労災保険には、労働者以外でも労災保険に任意で加入できる制度があり、これを「特別加入制度」といいます。特別加入できる方の範囲は、①中小事業主等 ②一人親方(個人貨物運送業者、個人タクシー業者、大工等) ③特定作業従事者④海外派遣者 で、一定の要件の下、特別加入することができます。

 業務災害によってかかる治療費や休んでいる間の給料、体に障害が残ってしまった場合の補償等労災保険は、労働者にとって大きな味方です。労災保険の適用があるのかないのかわからない方や特別加入を検討されたい方、その他労災保険についてお悩みのある方、一度ご相談ください。

配置転換と出向

2019年8月17日 社会保険労務士 原田聡

会社の事業効果的のため、従業員を適材適所に配置していくことは大切です。従業員の異動や配置転換などはそのうちの一つです。
会社が従業員に対して「配置転換」の命令をするためには、就業規則や雇用契約書に配置転換があることを記載する必要があります。配置転換の命令を出す根拠のない配置転換は無効となるおそれがあります。
それ以外にも配置転換が権利の濫用にあたる場合は、専門職として雇用されたにもかかわらず、専門職以外に配置転換をする場合も同様に無効となるおそれがありますので、雇用契約書を取り交わすに際して、専門職以外への配置転換等の有無を明記する必要があるでしょう。

 人事異動には、配置転換や職種の変更だけでなく、「出向」があります。
出向には、大きく在籍出向と転籍出向がありますが、在籍出向が出向元に籍を置いたまま出向先の会社で働くのに対して、転籍出向は、会社の籍を出向元から出向先に異動しますので、出向元との雇用関係はなくなります。
 在籍出向命令を拒否すれば懲戒処分の対象となるのに対して、転籍出向の拒否に対しては懲戒処分の対象とはなりませんし、転籍出向の場合は、従業員の同意が必要となります。
 在籍出向をする場合、通常、出向元と出向先との間で、出向契約書を締結し、出向契約書で、出向期間、出向者の賃金の支払い方法、就業規則等の適用、社会保険や労災保険の適用等の取り決めをしていきます。出向元と出向先であとあともめないためにも、きちんとした出向契約書を結んでおくことがトラブル回避のうえで大切です。
 出向は、キャリアの形成や企業間交流の促進等、会社によってその目的はいろいろあります。中には、左遷の意味合いでの出向もあるかもしれません。
配置転換や出向が適切に行える状態になっているのかどうか、一度、就業規則の規定がどうなっているのかを確認しておくとよいと思います。

労働組合

2019年8月7日 社会保険労務士 原田聡

賃金や労働時間等労働条件の改善をめぐって、会社は労働組合からの団体交渉を求められることがあります。この団体交渉に対して、会社は交渉を拒むことはできません。労働組合とは、労働者が団結して結成された組織で、会社との団体交渉等は、憲法第28条で保証された勤労者の権利です。また、会社は、労働組合加入等を理由に解雇や配置転換等不利益な取り扱いもできません。

 会社にとって、労働組合は敵対関係となりがちですが、労働組合を通じて従業員の意見に耳を傾ける機会の増加をチャンスととらえるならば、従業員の考えがトップにまで伝わる風通しのよい企業ともあるかもしれません。
 会社より経費援助を受けている労働組合は、労働組合法上は労働組合とは認められません。
例えば、労働組合に専従している者に対して、従業員と同じように賃金を支払ってしまうと、その賃金は労働組合に対する経費援助となってしまいます。労働組合専従者の給料は、主に労働組合に加入している組合員が支払っている組合費から支払われています。

 会社から労働組合への便宜供与は経費援助としてすることはできませんが、便宜供与であっても、会社に最小限の広さの事務所の供与やチェックオフ(労使協定で会社が組合員の給料から組合費を控除して、それを労働組合へ渡すこと)等は経費援助とはされません。   
とはいえ、会社はそれをしなければならないといった法的な義務はありませんので、労働者と使用者との間での取り決めによります。
会社側の注意点としては、労使間の取り決めによって成立した便宜供与が慣行として定着すると、将来、会社が労働組合に供与している事務所を取り上げたり、組合費を徴収することを一方的にやめたりすると不当行為となる可能性がありますので慎重な判断が必要です。

 会社にとって、労働組合の結成は、いい面もあればそうでない面もあります。どちらもいい会社にしたいという気持ちは一致しているかもしれませんね。

解雇制限と打切補償

2019年8月1日 社会保険労務士 原田聡

労働者が、業務中に業務が原因でケガをした場合、労災保険の療養補償給付として治療を受けることで、原則として本人負担はありません。健康保険のように医療費の3割負担はありません。また、労災保険では、治癒(症状固定)するまで治療を受けることができます。
 業務災害により長期療養を取っている労働者に対して、会社としては解雇を考えたいが可能かどうかの相談を受けることがありますが、労働者が業務上負傷したり、病気になった場合、その療養のための休業期間とその後30日間は解雇することができません。解雇が制限されることになります。

 しかし、労災による療養を開始してから3年が経過しても治っていない場合、会社は労働者に対して、1200日分の平均賃金を支払うことで、解雇制限が解除されるので、解雇することが可能となります。この1200日分の平均賃金を支払うことを「打切補償」といいますが、打切補償には、治療開始後3年経過時点またはその後に、労災保険の傷病補償年金を受けているか受け始めることになった場合も含みます。

 ただ注意しておくことは、「打切補償の支払いで労働者解雇がそのまま許される」ってわけではありません。解雇するにあたり、打切補償を支払いで、正当な解雇理由ができるわけではありません。
 ということは、業務災害であるにも関わらず、会社から、「かかった治療費は全額会社が支払うから、労災保険ではなく、健康保険を使ってくれ」なんて言われても、労災保険を使わなかったとすると、しばらくしてから「解雇」ということもあり得るかもしれません。健康保険を使っての療養中に解雇制限はありません。
そもそも、業務災害にも関わらず労災保険を使わず、健康保険を使うことは犯罪ですけどね。

有給休暇の取得はどれから?

2019年7月22日 社会保険労務士 原田聡

2019年4月より、働き方改革の一つとして、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、そのうちの年5日は、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
今までの従業員からの申し出に対して有給休暇を与えていたのと比べると大きな違いです。また、使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存もしなけれなりません。
 

この年次有給休暇の取得義務についてですが、使用者が労働者に付与して日を基準日として、基準日から1年以内に5日を確実に取得させることになりますが、労働者が取得する有給休暇は、いったいいつ付与した有給休暇を取得したことになっているのでしょうか。有給休暇の時効は2年ですので、従業員には当年度分と前年から繰り越された分の有給休暇があるわけです。
実は、年次有給休暇の消化の順番について労働基準法では決まりがありませんので、会社によっては、前年度から繰り越された分から消化させていくところもあれば、今年度に付与したところから消化させていくところもあります。
 

働き方改革の年5日の有給休暇を取得義務のタイムリミットは、付与した日から1年です。とすれば、前年度からの繰り越し分から有給休暇をあてがっているところは、有給休暇の取得義務を果たそうとするとほとんど有給休暇の完全消化ともいえます。労働者にとってはありがたいかもしれませんが、人材不足で悩みの尽きない企業にとってはとても大変です。
 

有給休暇の消化順についての取り決めは、就業規則で規定しておくことが必要かもしれません。
一度、就業規則のチェック等ご希望があればご連絡ください。

会社の安全配慮義務

2019年7月8日 社会保険労務士 原田聡

従業員が業務中にケガ等により休業をした場合、労災保険で療養補償給付であったり、休業補償給付を労働基準監督署に申請をし、労災給付を受ける手続きを取りますが、場合によっては、会社は従業員から安全配慮義務違反による損害賠償を請求される可能性があります。

会社は日ごろより作業環境に問題はないか、体の不調等はないかなど従業員の安全に配慮した労務管理体制を整えて対応しておくことが大事になります。

現時点で重大な事故が発生していないときこそ、事前に事故発生の予見をしたり、それを防ぐための対策をしておくことが必要です。
日本人労働者の不足を補う対策として外国人労働者が増えてきていますが、日本語に不自由な外国人労働者に対しての安全教育等は大丈夫でしょうか。機械を使う作業の場合、日ごろの点検で安全装置を適切に設置しておくだけでなく、機械の使い方の説明や安全に対する説明等のため、作業マニュアルを作成するなどをはじめ教育訓練も必要です。作業マニュアルも誰でもわかるものでなければ意味がありません。
また小さな事故が発生した場合の事故報告書の作成など報告させる環境整備も大切です。
重大事故になる前に原因を究明し、再発防止策を講じていく必要があります。

従業員の健康管理についても、それを怠ると、会社に対して安全配慮義務違反を問われます。働き方改革で時間外労働の上限規制ができましたが、それを遵守するだけでなく、従業員の人間関係・健康等への目配りや気配りも大事です。
「人」があっての会社だと思えば、その「人」を大切に扱う労務管理こそ、企業の発展に役立つものと思います。
労災保険の手続きのみならず、労務管理について相談等ございましたら、当事務所の社会保険労務士までご連絡ください。

労災保険の特別加入制度

2019年6月28日 社会保険労務士 原田聡

風邪をひいた場合など病院で治療をうけると健康保険の窓口負担は3割(70歳未満の場合)ですが、従業員の業務中のケガ等の場合だと、健康保険ではなく労災保険を使うことになるので、治療費はかかりません。業務中の事故等でケガをしたのが社長など経営者だと、労災保険の適用はありません。健康保険は、業務外の疾病等の場合に使うものだから、もしかして社長の場合の治療費は全額負担ということになるのでしょうか。

そうなのです、被保険者数が5人以上の会社の社長等経営者が、業務災害にかかると、労災保険からも健康保険からも給付を受けることができず、治療費は全額負担になってしまうのです。支払う治療費も高額になってしまうと大変です。
そうなると、会社の従業員と同じように働いている経営者は、万が一に備えておいたほうが安心です。

労災保険は、本来は従業員が対象となるものですが、労災保険の特別加入制度を利用することで、社長であっても労災保険の給付を受けることが可能になります。但し、誰でも特別加入できるわけではないのでご注意ください。

従業員と同じように働かれている中小企業の事業主の皆様、業務中に事故にあうと給付される保険がない可能性があります。ご不安な方、労災保険の特別加入制度に関心がある方、一度ご相談ください。

年次有給休暇の取得義務化

2019年6月10日 社会保険労務士 原田聡

2019年4月施行の働き方改革の一つである「年次有給休暇の取得義務化」。これは、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務化されたものです。

この義務に従わないということは、法律違反になるので、そうなると労働基準法第119条の「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」に該当することになります。従来の有給の申請がなければそのままというわけにはいかなくなります。

例えば、従業員の誰かが労働基準監督署に年次有給休暇の取得義務違反があるとして相談をしに行った場合、労働基準監督署から目を付けられ、大変な事態になってしまうことも想定でき、その対応にかかる時間やコストは企業にとっては大きなものになるかもしれないです。

まだ有給休暇の取得義務化に対応できていないかどうか次のことをチェックしておきましょう。
①就業規則への規定(使用者が年次有給休暇の取得時期を指定する場合には、就業規則への記載が必要です。)
②年次有給休暇管理簿の作成(3年間の保存義務あり。)
就業規則の見直しをはじめ労務管理等で不安のある方は、社会保険労務士へ一度ご相談をされてはいかがでしょうか。